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ITIL サービスデザイン − ソーシング

この記事を読んで外部サービス・プロバイダとサプライヤの違いがわかりますか?。
ITIL v3において各々の関わり方が現実に即した形になりましたが、混同しやすいため理解しづらい部分です。 しかし大変重要ですので、 ソーシングの考え方を理解しておきましょう。
この“外部サービス・プロバイダとサプライヤの違い”のタネあかしは次号にて!

by BMCソフトウェア編注

Vol.006 - 2008年12月16日(月2回発行)

今回は、さまざまな「ソーシング」についてお話をすすめます。これは、ITIL v2 では深く言及されていなかった部分です。しかし、サービス・プロバイダは組織の内部だけでなく、外部にもいる、という解釈をしている ITIL v3 では、この「ソーシング」の考え方は非常に重要です。とはいえ、そんなに難しいものではありませんので、すぐにご理解いただけると思います。

「ソーシング」というと、すぐに思い出す言葉は「アウトソーシング」でしょう。一般には、社内で持つべき機能や役割を社外に求めることをいいます。アウトソーシングの反対、つまり社内で持つべき機能や役割をまさに社内で準備することを「インソーシング」といいます。このふたつは非常にわかりやすく、また一般的、標準的な考え方です。しかし ITIL v3 が述べている「ソーシング」は、このふたつだけではありません。

さっそくですが、私たちの身の回りにはたくさんのITサービスにかかわる機器が数多く存在しています。中には同じような機能を持ったものや、同じようなデザインのものもあるでしょう。例えば携帯電話は、いまや電話としての役割のみならず、PCではないかと間違えるような豊富な機能がついています。組織が事業戦略に基づいて活動をするときに必要となるITサービスは、これらの数多くの中から選択されることになります。組織の事業戦略も活動も複雑に絡み合えば絡み合うほど、それに必要なITサービスにも複雑さが求められるようになり、そのITサービスを提供する機器も複雑になります。

たとえば、社外に情報を持ち出したり、社外から組織内の情報にアクセスしたりすることの多い営業マンのことを考えます。持ち出す情報の量や内容、確保しなければならないセキュリティレベル、情報に求められる鮮度、かけられる予算などによって、様々な選択が考えられます。営業マンひとりひとりに機器を持たせるとしても、その選択肢は

  • ノートPCを持たせ、情報はすべてローカルのHDDにコピーして持ち歩く
  • ノートPCと携帯電話を持たせ、情報は会社にダイアルアップ接続して参照する
  • 情報携帯端末(PDA)を持たせ、情報は概要だけをローカルにコピーして持ち歩く
  • PDAと携帯電話を持たせ、情報は会社に接続してPDA用に加工したものを参照する
  • 高性能な携帯電話を持たせ、情報は会社にダイアルアップ接続してPCと同じものを参照する

など、多岐にわたります。営業マンにノートPCを持たせるのか、PDAを持たせるのかによっても必要なサービスや機器は変わりますし、携帯電話でダイアルアップといっても、RAS(Remote Access Service)で会社に直接接続するのか、インターネット VPN を利用するのか、によってもITサービスに求められるリソースや能力は変わります。そういえば最近、PDAを使いこなしているビジネスマンの姿をあまり見かけなくなりました。さらに、営業マンが5人の場合と100人の場合とでは、ITサービスの基盤からして異なることは言うまでもありません。

時代の流れやビジネスの変化、ITの進化にともなって、ITに求められる技術(言い換えればサービス・プロバイダのスタッフに求められる知識や技能)もどんどん変化していきます。また、ITサービスの提供者側がサービス・プロバイダだけで完結することはほとんどありません。外部のサード・パーティ、いわゆる「サプライヤ」に協力なしには実現不可能なITサービスが数多くあります。携帯電話を利用する場合は携帯キャリア、インターネット・VPN を利用する場合はインターネット・サービス・プロバイダが代表的なサプライヤになるでしょう。アクセスする情報を保存してあるサーバをホスティングするかもしれません。その場合はホスティング業者がサプライヤだということになります。

前回の記事にも書きましたが、ITIL v3 では「現実に即した」考え方に改められたため、サービス・プロバイダは社内にいるかもしれないし、社外にいるかもしれない、という「現実」を反映しています。社内にある「内部サービス・プロバイダ」、社外にある「外部サービス・プロバイダ」、そしてサービス・プロバイダを助ける役割の「サプライヤ」がどのように関わるかによって、ITIL v3 では「ソーシング」を次のように定義しています。

  • インソーシング
  • アウトソーシング
  • コソーシング
  • パートナーシップ(マルチソーシング)
  • ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)
  • アプリケーション・サービス供給
  • ナレッジ・プロセス・アウトソーシング(KPO)

では、それぞれのソーシングのスタイルを一つ一つ確認しておきましょう。

<インソーシング>
ITサービスの新規導入・変更・改定・開発・移行・保守・運用・サポートなどを、組織内のリソースに依存する形態をいいます。組織内のリソースであるため、組織の文化や業務内容を熟知しており、多少の融通がきくことが想定できます。ナレッジを社内に溜めるということも期待できます。その一方で、ITサービスの規模が突然大きくなったり縮小せざるを得なくなったりしたときに対応が難しいとか、新しい知識や技術を取り入れるのに時間やコストがかかる、ユーザが内部サービス・プロバイダに甘えてしまう(明確なSLAを決められない、ユーザがSLAを超えたサービス要求を出してくる)といったデメリットもあります。

<アウトソーシング>
サービスの新規導入・変更・改定・開発・移行・保守・運用・サポートなどを正式な契約に基づいて外部のリソースに依存する形態をいいます。組織の外にサービス・プロバイダがいるという考え方です。規模の拡大・縮小や一時的なサービスの利用などに柔軟に対応できる、専門性、先進性が期待できるというメリットがある反面、コントロールが難しい、外部サービス・プロバイダの撤退や破綻などによって突然サービス提供が停止してしまう、外部サービス・プロバイダが自組織のガバナンスやコンプライアンスに対応しているかどうかの測定が難しい、といったデメリットがあります。

<コソーシング>
インソーシングとアウトソーシングをミックスさせたような形態です。たいていはひとつの内部サービス・プロバイダと複数の外部サプライヤを活用するようなスタイルを取ります。サービスの新規導入・変更・改定・開発・移行・保守・運用・サポートなどに、内部サービス・プロバイダが持ち合わせていない専門知識が必要となる場合、組織内のスタッフと外部の専門知識を有するスタッフとが連携して作業を行います。このような形態をコソーシングといいます。すべてを内部サービス・プロバイダが行うよりも迅速に対応できる、より専門的なスタッフが関与できる、というメリットがあります。

<パートナーシップ(マルチソーシング)>
サービスの新規導入・変更・改定・開発・移行・保守・運用・サポートなどを行う2つ以上の組織が、正式な取り決めの下で連携して活動することを表します。コソーシングとよく似ています。言葉の使い分けとしては、組織の専門性や迅速な対応といったメリットの他に、市場の急速な拡大や変化への戦略的な対応がクローズアップされる場合にこう表現されるようです。

<ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)>
組織におけるひとつの業務を丸ごと外部の組織に依存する形態をいいます。たとえば組織の会計業務を行う際に、企業会計に詳しいスタッフを組織で準備せずに、業務の全てを外部の組織に依存する形態をいいます。依存するサービスとしては上記のように会計業務だけなく、給与処理やコールセンタ運用などがあります。ビジネス・プロセスの信頼度を高める、責任やリスクを外部に移転できるというメリットがある一方で、社内にナレッジが溜まらない、企業間のカルチャのギャップが発生する、というデメリットがあります。

<アプリケーション・サービス供給>
いわゆるアプリケーション・サービス・プロバイダ(ASP)を活用することを指します。インターネットを利用したWebショッピングを行うといった事業戦略において、カート(買い物カゴ)のシステムや決済のシステムなどを自社開発していたのではコストが高くなってしまいます。そこで外部サプライヤが提供するASPによるカート(買い物カゴ)を利用したり、決済システムを利用したりすることで開発コストやアップグレードのコストを低減できます。

<ナレッジ・プロセス・アウトソーシング(KPO)>
BPOを一歩進めた形態です。アウトソーシングの最新の形とも定義されています。ビジネス・プロセスのアウトソーシングを受けるだけでなく、外部の組織のより高度な専門知識や分析能力、ノウハウやナレッジなどの提供も受けるという形態です。外部の組織にはより専門的で高度なスキルが要求されます。外部のナレッジを有効活用でき、大幅なコスト削減が見込めるメリットがある反面、社内にまったくナレッジが溜まらないというデメリットも考えられます。

これら7種類のサービス提供のうち、どのサービスを利用するとよいのかはケースバイケースと言えるでしょう。実際には、サービスストラテジによって明確にされた事業戦略に基づいて最適な選択をすることになります。それぞれのサービスの長所、短所を図1にまとめました。これらを知った上で上手に活用していく必要があります。

図1:サービスの長所と短所

提供サービス 長所 短所
 インソーシング  組織が直接コントロールできる/企業内にナレッジが溜まる  規模の拡大・縮小に制限がある/維持・発展させるためのコストが高い
 アウトソーシング  外部の専門知識を購入できる/一般的なニーズに柔軟に対応する  直接のコントロールは困難/外部組織のスキルを測定するのが難しい
 コンソーシング  市場投入までの期間が短い/専門知識の活用が出来る  プロジェクトが複雑化する/知的所有権、著作権の保護が難しい/企業間のカルチャの衝突
 パートナーシップ
(マルチソーシング)
 市場拡大・参入が容易/競争的な対応が可能/企業間のカルチャの衝突  プロジェクトが複雑化する/知的所有権、著作権の保護が難しい/企業間のカルチャの衝突
 ビジネス・プロセス・アウトソーシング  責任の所在が単一化する/アウトソーシング先へのリスクの移転/低コスト  企業間のカルチャの衝突/プロセスに対するナレッジの喪失/事業とプロセスとの関係の喪失
 アプリケーション・供給サービス  高価で複雑のソリューションの利用/低コスト/サポート、アップグレードを受けられる  企業間のカルチャの衝突/外部組織のナレッジは利用不可/課金モデルが多い
 ナレッジ・プロセス・アウトソーシング  外部の専門スキルやナレッジの利用/大幅なコスト削減  企業間のカルチャ衝突/内部の専門能力の喪失/事業とプロセスとの関係の喪失

さて、次回からはいよいよ、「サービス・デザイン」で述べられている具体的なプロセスを順にご紹介していきます。お楽しみに。